宮部みゆきさんの『火車』を読みました

宮部みゆきさんの傑作サスペンス『火車』をAudibleで聴きました。あまりに面白くて8時間連続で聴いてしまいました。真相を小出しにする書き方がとても上手くて、ゾクゾク感を求めている人にオススメの一冊です。

全体的には、急拡大するクレジットカード業界の招いた借金にまつわる悲しいお話です。貧すれば鈍すると言いますか、本来的に能力の高い人物が境遇が恵まれないために壊れていくという悲劇が描かれています。

資本主義経済は私たちを幸せにしたのでしょうか。もちろん生活は便利で安全になりました。これはありがたいことです。しかし資本主義経済とは「成長」という餌を与えないと死んでしまう魔物です。だから、現代社会において、私たちは常に「必要以上に消費せよ」という挑発を受け続けることになりました。いつしか私たちは「幸せとは最大限の消費をすることだ」という実現不可能な妄想に取りつかれ心を病むようになりました。『火車』はそんな行き過ぎた商業主義の弊害をとてもうまく描いているといると思います。

ユヴァル・ノア・ハラリは著書『サピエンス全史』で「資本主義経済とは成長を優先するあまりその結果についてしばしば無視される」という旨のことを指摘しています。物欲はとどまるところを知りません。モノを手に入れると幸福感は短期的に増進しますが直ちに飽きへと変化します。私たちは、しばしばこの事実に気づきながらも、新たな幸福感のためにさらなる消費をします。資本主義経済はこの「のどの渇きを塩水で満たす」ような運動から最大限に受益しますが、肝心の私たちの長期的な幸せについてはついに顧みることはないのです。「成長」だけがこの魔物の関心事だからです。このことについてもう一度考え直す良い機会を『火車』は与えてくれるように思います。

Audibleでは2か月無料キャンペーン中です。未読の方はこの機会にぜひ読んで(聴いて)みてはいかがでしょうか。